2、比較歴史学

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 タイムトラベラーたちは過去において撮影した様々な映像を持ち帰っていた。映像のほとんどは一般公開されたため、メディアは素材には事欠かなかった。つぎつぎに公開される歴史絵巻に、私は目を見張り心をときめかせた。文献や資料を再構成して、頭のなかにぼんやりとした像を結んでいた数々の歴史的光景が、目の前にあざやかに映し出されているのだ。  私が最も美しいと思ったのは、南蛮船が平戸の港に入港する風景だ。船が湾内に停泊し碇を下ろすと、港からは無数の艀が漕ぎ出て南蛮船を出迎える。  「なんという光景だ!わくわくするではないか。」  南蛮船の船首で赤いマントを羽織った男が手を振って何事かを叫んでいる。私も思わず叫んでしまった。  「やほぉーい、やほぉーい!」  これは私のテレビ出演中におこった、愛すべきエピソードである。  その後、私は「やほぉーい先生」と呼ばれることとなる。
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