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本の虫の足は止まることなく動いた。
交差点を渡り、小さな公園を抜け、細い路地を進んでゆく。地平線に陽がズブズブと沈んでいくのが見えた。
季節はもう晩秋である。時折ビュっと吹く風は、地に落ちた真っ赤な夕日をカサカサと巻き上げながら、本の虫の頬にヒヤリと掛かる。
冬はもう目前だ。生き物にとっては死の季節。
さっきから早足なのは、この寒さのせいか。それもあるだろうが、本の虫にはこれからどうしても行かなければならない場所があった。
きっと、そのためだ。
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