87人が本棚に入れています
本棚に追加
だからトオルが聞き返して来るのは当然の事だ。
そう思っていたのに、次に花火の音が聞こえた時、オレはトオルの腕の中にいた。
「…え?」
数秒経って、やっと抱きしめられている事に気付いた。
顔だけじゃなくて体まで熱くなって来る。
「トオル、あの…」
「アカン…めっちゃ嬉しい」
その絞り出した様なトオルの声に胸が締め付けられて、どうしてもトオルの顔が見たくなった。
強めに抱きしめられている体は無理だから、首だけを動かしてトオルの顔を見る。
あぁ…恥ずかしくて死にそうだ。
声が聞こえていた事も、今の2人の距離も、トオルのこの嬉しそうな顔も、全部恥ずかしい。
「ユウちゃん泣きそうやん、恥ずかしいん?」
「…うん」
オレが望んだ通りに、トオルが頬をなでてくれる。
「ワイは嬉しゅうて泣きそうやわ、ははっ」
楽しそうにそう言って、トオルはオレを抱きしめたまま後ろに倒れた。
そして自分の上に乗っているオレの顔を両手で包むと、優しく引き寄せてキスをする。
最初のコメントを投稿しよう!