俺達の青春

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 高校三年生の七月。  甲子園の切符を賭けた地区予選の決勝で敗れ、青春は終わりを告げた。  俺は多彩な変化球を操るエース吉岡と呼ばれ、巧みなリードでチームを纏めるキャプテン岩田とバッテリーを組んでいた。有名だった俺達は、甲子園を騒がせるだろうと話題に上がっていたが、負けて引退すれば名前すら忘れ去られる。 「なあ、岩田。俺達の青春は短かったな」 「青春か……野球だけが青春じゃないぜ。だって、九月に文化祭があるだろ?」  岩田の言おうとしている事はすぐに分かった。それは野球部のマネージャーだった沙織の存在。可愛くて優しく、頑張り屋の沙織は野球部の女神だった。特に俺や岩田とは仲が良く、フリーの沙織はどちらと付き合ってもおかしくない。  野球では最高の相棒だった岩田が、今度はライバルとなった。岩田は知能派で物事を進めるタイプ。そんな岩田が俺の目を見つめて笑う。その瞳はマウンドで見た、作戦の成功を確信した時に見せるものだ。  余裕なのか? 絶対に負けられない。  俺達は新たな戦いに向かって走り出した。
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