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「先輩、一緒に後夜祭の花火見てください!」
実行委員会が漸く終わっての、人通りの少ない玄関での声。
二年玄関だから、その声は一年の女子だろう。
「……あ、ごめん俺もう一緒に見る子決まってるから」
からっと謝るその声には聞き覚えがあった。
と言うかいつも毎日嫌ってぐらい聞いている、その声。
私の幼馴染みの声だった。
……そっか。
亮太はもう、花火見る人いるんだ……。
何だか私一人が取り残されたみたいな……そんな気持ちだった。
いつまでも、恋人でもないのに私の隣には彼がいて……それが当たり前のようだったから。
……だから聞きたくはなかった。
うちの学校の文化祭には幾つかの伝説がある。
お化け屋敷をやったクラスには必ず本物のお化けも出る、とか。
文化祭の実行委員長と副実行委員長は必ず文化祭後にカップルになる、とか。
あと、あれも。
カップルでクラスの実行委員になったら必ず別れる、とか。
で、最強なのが後夜祭の花火を好きな人と二人きりで一緒に見ると、想いが通じるっていうやつ。
……私も、今年は勇気を振り絞って誘ってみようかと思ったのに先を越されてそのあげくに、別の人を誘うとか間接的に聞くつもりもないのに聞いちゃって……最悪。
……そっか。
亮太は、その噂……やっぱり知ってるの、かな。
……そっかぁ。
なぁんだ。
好きな人、居るなんて……知らなかった。
……バカ。
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