花火

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「……一緒に見れなかったの?」 「は?何が?」 右側に小さくなって立つ彼女に目を向けた。 「あ、いや……だから、その」 言い淀む幼馴染みに眉を寄せる。 「何だよ、はっきり言えよ」 「ごめん、聞いちゃったの。一緒に見る子決まってるって言ってるとこ」 マジか。やっちまった。 俺、あの時一体何て言ったっけ。 慌てて思い出そうとしたけど次の花火が上がった途端にそれはどうでもよくなった。 今はとにかく彼女と一緒に花火を見たい。 「そんなのどうだって良いじゃん。それより……ここからでも案外綺麗だな」 そうだ。どうだって良い。 今、一緒に見ることに意義がある。 「来年も……一緒に見れると良いな」 つい口をついて出た。 「……うん」 ただその一言の返事だけでもにやけるんだよ、あほ。 随分と今日は素直だな。 お前はあのジンクス知らないのか? つぅか、本当にこれで叶うのか? 後夜祭の花火を一緒に見ると両想いになる、だっけ? 叶えてくれよ、神様。 そう願いながら、また上がるショボい花火を二人で見た。                     了
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