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本屋さん一肌脱ぐ
季節は秋。
ノガミ大学では毎年恒例の文化祭が開かれる季節である。
学生にとっては自分たちでイベントを進行するため学校に寄り付く組と、休校日として学校から離れる組に二分されるこのイベントだが、人魚書店の店主にとっては数少ない特別な日である。
「まったくもう……浮かれるのはいいけれど、そんな格好で仕事になるの?」
「だってしょうがないじゃない。今年の出し物はコレって約束しちゃったし」
奇抜なヘアースタイルをセットしている読子に傍らでくれははあきれてしまう。
文化祭の開催中、人魚書店では大学の漫研と協力しての古本市をやるのが定番になっている。
通常なら読子は呪いにより店を離れられないのだが、この時期だけは例外である。
「毎年思うけど、過去の私も良いことをしたのもね」
この古本市は十数年前、まだ人魚書店の学生アルバイトかつ漫研部員だった頃の読子が企画した催しである。
それ以降、読子が大学を卒業し魔女になっても、後輩達と読子の手で続いていた。
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