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祭が終わり、人魚書店に戻った頃には読子はぐったりとしていた。自分がまいた種とはいえ半日以上ぶっ続けでお悩み相談をし続けたのだから無理もない。
打ち上げ会場である人魚書店の座敷に戻ると、読子は挨拶もそこそこにデコ盛りを乱しながら横になってしまった。
「ん……寝ちゃってた?」
「今日はお疲れさん。漫研の子達も本が完売して大喜びだったよ」
「さすがにあの人数を相手にするのはこたえたけれど、後輩のみんなが喜んでくれたのなら私も満足よ」
「でも良いのか?」
「なにが?」
「せっかくの外に出られる日だっていうのに、やったことはいつも店でやっていることをさらに忙しくしただけだぞ。学食すら寄れなかったじゃない」
「あ!!!」
一仕事を終えた満足感も、やり残した後悔を思い出すと吹き飛んでしまう。
楽しみにしていたあれやこれ、他の人にとってはなんてことのない日常の構成要素であっても、今の読子には非日常なささいな欠片達。
「ま、今日はコレでも飲んで寝ちまおうよ。私も付き合うからさ」
「くれは……アンタやっぱり良い子よね」
「まあ今年は真島とのこととかもあったし……って、やめんかこの馬鹿」
「よいではないか、よいではないか」
くれはが持ち出したのは、打ち上げで漫研部員達が飲んでいた安酒をジュースで割ったものの残りである。
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