文化祭当日

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 と言うか、校舎裏でなんて、どんな恋愛漫画の真似事よ。  視線の先には知った背中が見えかけて、思わず踵を返した。  ちゃんと告白できてるんだなー。  たくさんの感情を込めた溜息を吐き出して、来た道を戻る。 「先輩、末永くお幸せにね」  届くはずのない声は、賑やかな声にかき消され、見上げた先にある文化祭のマスコットキャラの笑顔が、こんな私を見つめてくれた。  そんな笑顔で見つめないでよーー。  泣いちゃうじゃないかーー。  たくさんの人混みの中、思わずそんなことを呟いたものだから、我慢し続けていた気持ちが視界を潤ませて、滴り落ちる。  何度目かの勝手な失恋に、こうして泣いたのは初めてだった。  早く、好きを消せたらいいのに。  乱暴に顔を拭いて、頭を振って、いつもの笑顔を浮かべて視線を上げた。  その先に。
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