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けれど、あまりに遅くなってきて、「まだいつ行けるか分からんから、そっちで楽しんでて」という連絡が入ったときは、少しの苛立ちと切なさが入り混じっていた。こんなに久しぶりに会えるのに、私はやっぱりどうでもいい存在なのか、と考えてしまったからだった。 少し自棄になった私が、 「もう、いつ来るか分かんないし、気にせず楽しもう!向こうも向こうで色々あるだろうし、仕方ない」 そう言ったけれど、もうその時には案の定、友人たちは彼のことを良くは思っていないようだった。それでもいいところもあるのだと話しても、“あぁ、振り回されてるな”と表情で不快を表されてどうしていいのか分からなくなっていた。 結局会えたのは、深夜の2時半過ぎ。 空いている店を探すのにも一苦労して、移動中に私は彼に八つ当たりをしてしまった。 「みんな、私がテキトーに扱われてるなって顔してたよ。そっちが大変なのも分かるけど、連絡もまともに取れなくて、みんな可哀想なあたしに付き合ってくれてる感じになっちゃったんだから」 そんなことを言ってしまった。 「会ったこともないやつのこと、悪く言うようなやつは好かん。結局、俺のこと知らんやん、そいつら」 それも確かにごもっとも。けれど、私は友人たちの性格を知っている。考え方も知っている。私を大切にしてくれている紳士で大人の友人たちが、あの状況でどう思うかだって想像できてしまう。そんな彼らに、それでも久しぶりの旅行を楽しんでほしくて、私に付き合わせている申し訳なさから頭がいっぱいになって、さらに私を追い詰めた。 ぜんぶ、私がもっと上手くやれていたら良かっただけの亀裂に違いない。そんな描写を、伝えたいたった一人の友人の抱える悩みに合わせて乗せて、帳尻を合わせた作品。 彼と言っても、彼氏だったのは随分と昔のことで、あれはただの片想いだった。それを今更私の我がままで、「なんで早く会えないの?」なんて言える関係でもなかった。友人たちだってそれは知っていたけれど、私たちの関係はきっとみんな理解に苦しむのだ。寄りを戻せばいいだけのことが、私たちにはできないから。
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