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「じゃがいものポタージュと、今は夏野菜が豊富なので彩り豊かなサラダと、健康食と言えば鰯も考えたんですが新鮮な鮎が入ったので、生姜の煮付けにしてみました」 「あら、いいわね。まだ残ってるなら近いうちにまた来るから、塩焼きも食べたいわ」 「ご用意しておきますね」 川魚なんて、珍しい。私は地元でよく取れたから食べ慣れているけれど、においが独特だというそれは万人受けするものではないようなことを聞いたことがある。それでも置いているということは、やはり、私が来ることが分かっていたのだろう。 「そろそろ、お作りしてもよろしいですか?」 「ええ、ひと段落ついたので。いただくわ。それと、カウンターに移っても?」 「はい、もうお客さんも真澄さんだけですし、お好きな席にどうぞ」 スマートにそう言って、彼は持っていたお盆にカップとポットを乗せていく。 「面倒を掛けてごめんなさいね。ありがとう」 「面倒なんて。お好きなところで寛いでいただくのが一番ですから」 そう言ってカウンターに移動すると、マスターは食事の用意のため奥に入っていった。それを見送って、またページを開いた。 これは、たった一人の人にエールのつもりで書いたもの。言葉で簡単には言い表せない、男女の亀裂。そこには子供もいて、友人関係もあって。 似たような状況の苦しみを、私もしたことがあったから書けたもの。 大切な人と、大切な友人が、私のせいで会ってもいないのに仲違いを起こして。私が心を蝕んでいたせいもあって、彼の良さを友人に上手く伝えられずに悪い印象ばかりを残してしまった。あの時はタイミングも悪かった。 友人と旅行が決まって、飛行機で向かった先は彼の住む地だった。夜をだから、好きに過ごせばいいと気遣ってくれた友人たち。 彼には、「好きにしていいって言われてるからいつでも会えるよ」と伝えたことがいけなかったのだ。彼は友人の結婚式の日だったらしく、結局5次会まで行ってしまい、まともな時間も決まらないままに、その日は日付を跨いでいた。心配する友人に、 「いつも自由人だからね。私もいつでも会えるよって言っちゃったし」 そう言って誤魔化した。
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