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一瞬、彼の言っていることが判らず、下げた頭を上げれば、桜井君に、優しい笑顔が消えていた。
切れ長の目を意地悪く細め、人差し指をピシッと突きつける。
「嫌だと言ったんだ、莫迦!
この前も、バスケはしないと言ったばかりだぜ?
いい加減判れよ、里香(りか)」
「えっえええ!?」
普段気配りの得意な、委員長なのに今『莫迦』って言った!?
しかも、私の名前を里香って呼び捨てにした!
いつもは、優しい声で『前原さん』って呼んでくれるのに!
笑顔がトレードマークなはずの桜井君、今日はなんか凄く意地悪だ。
教室にいる時と、まったく違うし!
私、驚いて大きく一歩下がったら、ごん、と体育倉庫の壁に頭をぶつけた。
「~~っう」
あまりの痛みに涙目になったら、桜井君は、驚いて目を見張る。
「里香!」
その、意外に心配そうな表情が、なにやら申し訳なくて。
「痛い~~たんこぶ出来た~~」って。
たいしたことないよって、おどけて見せたら、ほっとしたように言った。
「間抜け」
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