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「へーへー、分かりました。
できますよ、即刻。月面旅行。
資金面のバックアップは柏木さん家がしてくれるんでしょ?
見越して用意してありますよ、はいはい。
……仕方がないじゃんよぉ、大伴家は柏木家に仕えてんだし、国家研究所の覇権を握ってんのも柏木さん家じゃん?
俺達しがない研究者は従うしかない……え?
ヤーね、冗談よ。
俺と皇坊っちゃんの仲じゃない。
本音は友情ってやつよ、はいはい」
俺自身は面白くないけどさ?
旧友が惚れた女に会いに行きたいって言ったら、手伝ってやるのが筋ってもんじゃん?
たとえその相手がどれだけイケスカナイ地球外女でもさ。
俺は皇坊っちゃんとの通話を切ると、研究室の天井を仰いだ。
そこには太陽系を書き記した天体図が貼られている。
月までの距離は、おそよ384,400km
俺の旧友は、その距離を飛び越えて惚れた女に会いに行くらしい。
「あー……ったく、ほんと、イケスカナイねぇ……」
いつの間にかできていた旧友との距離を思い、俺は小さく溜め息をつくと準備を急がせるべく研究室を出ていった。
【 END 】
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