The moonlight princess【察】

5/14
前へ
/14ページ
次へ
「そもそもかぐや、君は『真実』というものをどう定義するんだい?」  警戒の色を露わにするかぐやに向かって、俺はあの日から気にかかっていた疑問を口に出した。 「どこからどこまでが真実とやらで、嘘や偽りというものはどこからのことを言うのだろう?  ある人にとってはそれが真実でも、他の人から見れば同じものが嘘や偽りにも見える。  それを普遍的かつ、誰から見ても客観的だと言える基準で君は定義できるのかい?」 「……言っていることが分からないわ、先生」  彼女の無機質な瞳が、警戒の中にわずかな侮蔑を混ぜる。  かぐや、君は色々と油断しているみたいだね。  初めて直接対面した時からそうだった。  他の家庭教師達がいかにも良家の好青年を装う中、俺だけが茶髪にピアスのラフな姿で現れたから、4人の中で俺が一番頭の軽い人間なのだろうと、君は疑いなく信じてくれたね。  だからこそ、俺は思う存分君を観察することができたよ。  君のそんな愚かさに、俺は感謝さえしているんだ。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加