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「ええ、普通の矢だと殺傷してしまうので、鏑矢(かぶらや)を使ってもらっています。これなら刺さる事はありませんから」
「……飛ばすと音が鳴るやつね?」
委員長──と呼ばれた少女は、肯定の意を込めて、こくりと頷いた。
鏑矢に刃は無い。敵に突き刺さる鏃(やじり)の代わりに付く「鏑」が笛の構造を持ち、飛翔する際に大きな音を出すのだ。
そこまで聞いて感心した菊花だが、その直後……。
「うちらも、戦う事になるんね……」
ため息をつきながら、菊花は委員長に言う。
「今の所は武道の経験者、そして私のように格闘技や剣技を心得ている方で、できる限り──新島組でしたか、あの方たちの襲撃をしのぐつもりです」
その時、山の下からトラックのエンジン音と、まるで掃除機の音をひどくしたような轟音が聞こえ始め──二人がいる塀の、すぐ裏で停止する。
「何なん!?」
考えるよりも先に、菊花は百八十度回れ右して豪攻車の中へ!
驚く委員長に目もくれず、エンジンを始動させる。
「夕凪さん! 無茶ですよ!」
「大丈夫! こいつタイヤが外れてるだけでまだ動けるわ!」
流石の委員長もこれには慌てた様子で、懐にしまっていたホイッスルを取り出すと、思いっきり息を吹き込んでそれを鳴らした!
ピィィィーーーーーーーーーーーッ!!!!
大きな音が響いた直後、校内の至る所から、竹刀や薙刀、和弓やアーチェリー、さらには柔道着と空手着を着た生徒たちが集まってくる。
「垰さん!」
「うわ、昼間のロボが動いてるぞ!」
「みんな、あれには夕凪さんが乗ってる! 攻撃しないで!」
後から来た一団には、状況が解らない。
委員長こと垰 真澄(たお ますみ)は、集まってきた面々に短くそれだけを伝える。
「何だぁ!?」
驚いたのは、塀を挟んで道路にいる隆義たちの方だ。
[ボク、様子を見てみる]
間髪入れず、心のジャグリオンがその場でジャンプ!
ジャグリオンの無表情なメインカメラは得物を持った武道部の一団と──動いている豪攻車の姿を捉える!
[学校の中に引っ張った豪攻車が動いてる!]
「何っ!?」
心のジャグリオンは、大騒ぎの渦中にある敷地内へと着地する。
「何だ何だ! 頭蛮王か霞中の不良連中が忍び込んできたのか!?」
隆義も後に続き、大きくジャンプ!
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