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「たかよし! ちがう! あれにのっとるの、たかよしのおねえさんよ!」
「ッ──!?」
大慌てで着地した先は……ガシガシと地面を這う豪攻車の真ん前だ!
「このーッ!!」
しかも間の悪い事に、菊花は目の前にいる機影をろくに確認もせず、パンチ動作を繰り出した!
「うぐッ!?」
着地直後で回避が間に合わず、隆義はボクサーのようにシ式の両腕をクロスさせ、一撃を何とか防ぐ。
だが、金属と金属が衝突する凄まじい音と衝撃が、コクピットを揺らす!
「姉ちゃん! 落ち着けーッ!!」
隆義はたまらず叫ぶが──
「まどをあけんと、そとにはきこえんよー!」
「うげっ!」
正面の窓には、二回目のパンチが迫ろうとしている!
隆義は咄嗟にホバーのスロットルを全開、ペダルを思い切り前を動かしながら踏み込む。
たちまち、シ式は豪攻車と距離を取る形になり、窓を開ける余裕ができた。
一方、ジャグリオンの方は、シ式を追いかけようとする豪攻車の後ろに立とうとしている。
「とにかく、こいつを止めなきゃ!」
銃を使うか? 心は咄嗟に、ジャグリオンに背負わせたAKライフルに手を伸ばそうとするが──いや、目の前の豪攻車は武装していない。
冷静にそれを思い出し、実行するプランを格闘戦に切り替える。
だが、気になる点が一つ──背面の乗降ドアが開いたままなのだ。
「たかよし!」
「今度は何!?」
「こころも、とめてぇっ! むせん、つうじるじゃろっ!?」
「マジかよおぉぉ!!!?」
窓は開いた、今度は無線のスイッチ! 隆義は額から大粒の冷や汗を流しながら呼びかける!
「姉ちゃん! それに乗ってるの姉ちゃんだろ! 落ち着いてくれッ!! 心も!そいつを後ろからブン殴るのはやめてくれッ!」
叫ぶと同時に飛びかかって来た豪攻車を、相撲で力士がぶつかり合うかのように、シ式が受け止めた!
一方、攻撃動作に入っていたジャグリオンは、振り上げた腕の目標を豪攻車の背中から地面へと変更する!
ズ シ ィ ィ ン ! !
凄まじい音が二つ、校庭を揺るがした直後……辺りに、静寂が戻った。
「あいたたた……! た、隆義!?」
今まで目の前にありながら、まともに見えていなかった「前」。
菊花の顔面はぶつかった衝撃で、潜望鏡のようなペリスコープを覗き込む形になっている。
「そうだよ! 弟の隆義だッ!!」
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