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「カンガルーみたいに、跳ねて動けばいい?」
[イエスだよ~! バッタの動きでもいいと思う~]
「あ、それならうちでもわかるー」
脳裏を読みながら感心するきゅーちゃんをよそに、隆義はペダルを踏み込み、その場でシ式をジャンプさせる。
一回、二回、三回……要領を掴んだのか、四回目からは前に跳ねていく。
「こいつ……思ったより速い!」
「すごいすごい!」
「止まる時は?」
[空中で、機体の脚を前に向けて! 少しずつブレーキがかかるから。スロットルを一気に入れると、急停止するよー]
少し調子に乗ったのか、シ式はスピードがついている。
もうすぐ、花壇の前のフェンスにぶつかるかもしれない。隆義はそう思うと、心に言われた通り、両足の多軸ペダルを前に押し出し、機体の脚を前に向ける。
「ブレーキ!」
[この場合は、スラストリバースが正しい気がする~]
一気にレバーを前に動かし、遠心ファンからの空気流を前方へ!
着地しようとする機体は一気に減速し、フェンスの少し手前で停止した。
(これなら、もしかしてあのゲームの動きも応用できるんじゃ……?)
隆義はレバーを再び真ん中の位置に戻すと、できるだけ地面とのショックを和らげるように、ふわっとシ式を地面に下ろす。
[わ、とっても上手じゃない。松君みたいに機体を静かに下ろしたねー]
「仲間?」
[うん。……あ、ここではエニアックって呼ばなきゃ。失敬失敬]
カンガルーを思い出していた隆義の脳裏に、聞き覚えのあるワード……。
「世界初のコンピューター?」
そう、エニアック(ENIAC)は世界初のコンピューターとして広く知られている。一般的には、であるが。
同時代に、エニアックと同じくアメリカのアタナソフ&ベリー・コンピューター、ドイツのZ3、イギリスのコロッセウスという、黎明期のコンピューターが存在したのだが、知っていたらマニアックすぎると言える程、名を知られていない。
それはさて置き──心は、そのエニアックこと松という人物の事を思い出しながら、さらに語る。
[ちょっと変わった子でねぇ……よくゲームのキャラの声真似をするんだよ。誰であろうと私を越える事など不可能だ。とか、大きすぎる修正が必要だ。とか]
「あぁ、俺そのゲーム知ってる。結構昔のやつでしょ? 難しかったなぁ」
[え、やった事あるの?]
「うん。何とかクリアはしたよ……」
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