9.桜小路学院の夜

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「カンガルーみたいに、跳ねて動けばいい?」 [イエスだよ~! バッタの動きでもいいと思う~] 「あ、それならうちでもわかるー」  脳裏を読みながら感心するきゅーちゃんをよそに、隆義はペダルを踏み込み、その場でシ式をジャンプさせる。  一回、二回、三回……要領を掴んだのか、四回目からは前に跳ねていく。 「こいつ……思ったより速い!」 「すごいすごい!」 「止まる時は?」 [空中で、機体の脚を前に向けて! 少しずつブレーキがかかるから。スロットルを一気に入れると、急停止するよー]  少し調子に乗ったのか、シ式はスピードがついている。  もうすぐ、花壇の前のフェンスにぶつかるかもしれない。隆義はそう思うと、心に言われた通り、両足の多軸ペダルを前に押し出し、機体の脚を前に向ける。 「ブレーキ!」 [この場合は、スラストリバースが正しい気がする~]  一気にレバーを前に動かし、遠心ファンからの空気流を前方へ!  着地しようとする機体は一気に減速し、フェンスの少し手前で停止した。 (これなら、もしかしてあのゲームの動きも応用できるんじゃ……?)  隆義はレバーを再び真ん中の位置に戻すと、できるだけ地面とのショックを和らげるように、ふわっとシ式を地面に下ろす。 [わ、とっても上手じゃない。松君みたいに機体を静かに下ろしたねー] 「仲間?」 [うん。……あ、ここではエニアックって呼ばなきゃ。失敬失敬]  カンガルーを思い出していた隆義の脳裏に、聞き覚えのあるワード……。 「世界初のコンピューター?」  そう、エニアック(ENIAC)は世界初のコンピューターとして広く知られている。一般的には、であるが。  同時代に、エニアックと同じくアメリカのアタナソフ&ベリー・コンピューター、ドイツのZ3、イギリスのコロッセウスという、黎明期のコンピューターが存在したのだが、知っていたらマニアックすぎると言える程、名を知られていない。  それはさて置き──心は、そのエニアックこと松という人物の事を思い出しながら、さらに語る。 [ちょっと変わった子でねぇ……よくゲームのキャラの声真似をするんだよ。誰であろうと私を越える事など不可能だ。とか、大きすぎる修正が必要だ。とか] 「あぁ、俺そのゲーム知ってる。結構昔のやつでしょ? 難しかったなぁ」 [え、やった事あるの?] 「うん。何とかクリアはしたよ……」
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