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そして、食事に呼ぶ時や用事がある時に、部屋に出入りもしている。当然、ゲームで遊んでいる様子も直接見ているのだ。
「ロボットに乗るゲームばっかりやっとったけぇ、あれに乗って逃げて来られたんじゃろうね……」
保健室の前にぽつんと残されたシ式を眺めながら、菊花は大方の予想をつける。
多分、あれに乗って逃げてきたのだろう──と。だが、この為に「厄介事」になったとも考えていた。
既にこの学校は新島組に目をつけられている。隆義を連れてきた心も、もう一つのロボットに乗っている。
「母さん。あたしらって、とんだ厄介事に巻き込まれたかもしれんよ……」
菊花の心の内を見ると、自分の弟を邪険にするつもりは無い。崖を崩した後の様子を面白可笑しく笑ったとは言え、曲りなりにこの学校を守ったからである。
だが、これから起きるであろう事に一抹の不安を抱えていた。
自分たちが今後新島組に狙われ続けであろう事はもちろん、隆義の事に関しても、である。
一方、日向の目線は、隆義が乗っていたシ式から、校門の近くで今も動いているジャグリオンと──あいちゃんの方に移る。
「それで、あの子たちは?」
「あっちのロボットに乗ってる子は、隆義を連れて来た子よ」
ジャグリオンが動きを止め、乗降ハッチが開く。
そこから身を乗り出したのは、少年とも少女ともつかぬ中性的な雰囲気の子だ。
日向は一瞬、心のその姿を見て「どっちだろう」と考えたが、直接話すか、妙子たちに聞けば良いかと考えを切り替える。
「あの子、学院の本校の制服を着とるじゃない……」
次の瞬間には、心の事を妙子に聞こうと思った根拠が、思わず口に出ていた。
「木戸 心、あの子の名前よ。間違いなく本校の子みたい。聖叉って子の友達みたいじゃし」
「あそこにおる、もう一人の子は?」
日向は、あいちゃんの姿を見て「あの服何なんじゃろう」と思いながらも聞いてみる。
「アイドルのあいちゃんにそっくりじゃけどねぇ……」
「まさか」
菊花の返答を聞いて、日向は「ありえない」と思った。
ここは所謂アイドルという職業の者が居るにしては、あまりにも場違いな場所だからだ。
ましてや、ここは早かれ遅かれ戦場になろうとしている……。
「でも、心配なんは隆義の方よ。今までやってきたゲームに影響されて、自分も戦うとか言い出すんじゃないんかって……」
「……っ」
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