9.桜小路学院の夜

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 そして、食事に呼ぶ時や用事がある時に、部屋に出入りもしている。当然、ゲームで遊んでいる様子も直接見ているのだ。 「ロボットに乗るゲームばっかりやっとったけぇ、あれに乗って逃げて来られたんじゃろうね……」  保健室の前にぽつんと残されたシ式を眺めながら、菊花は大方の予想をつける。  多分、あれに乗って逃げてきたのだろう──と。だが、この為に「厄介事」になったとも考えていた。  既にこの学校は新島組に目をつけられている。隆義を連れてきた心も、もう一つのロボットに乗っている。 「母さん。あたしらって、とんだ厄介事に巻き込まれたかもしれんよ……」  菊花の心の内を見ると、自分の弟を邪険にするつもりは無い。崖を崩した後の様子を面白可笑しく笑ったとは言え、曲りなりにこの学校を守ったからである。  だが、これから起きるであろう事に一抹の不安を抱えていた。  自分たちが今後新島組に狙われ続けであろう事はもちろん、隆義の事に関しても、である。  一方、日向の目線は、隆義が乗っていたシ式から、校門の近くで今も動いているジャグリオンと──あいちゃんの方に移る。 「それで、あの子たちは?」 「あっちのロボットに乗ってる子は、隆義を連れて来た子よ」  ジャグリオンが動きを止め、乗降ハッチが開く。  そこから身を乗り出したのは、少年とも少女ともつかぬ中性的な雰囲気の子だ。  日向は一瞬、心のその姿を見て「どっちだろう」と考えたが、直接話すか、妙子たちに聞けば良いかと考えを切り替える。 「あの子、学院の本校の制服を着とるじゃない……」  次の瞬間には、心の事を妙子に聞こうと思った根拠が、思わず口に出ていた。 「木戸 心、あの子の名前よ。間違いなく本校の子みたい。聖叉って子の友達みたいじゃし」 「あそこにおる、もう一人の子は?」  日向は、あいちゃんの姿を見て「あの服何なんじゃろう」と思いながらも聞いてみる。 「アイドルのあいちゃんにそっくりじゃけどねぇ……」 「まさか」  菊花の返答を聞いて、日向は「ありえない」と思った。  ここは所謂アイドルという職業の者が居るにしては、あまりにも場違いな場所だからだ。  ましてや、ここは早かれ遅かれ戦場になろうとしている……。 「でも、心配なんは隆義の方よ。今までやってきたゲームに影響されて、自分も戦うとか言い出すんじゃないんかって……」 「……っ」
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