9.桜小路学院の夜

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 魔女の如く妖しげな微笑みを浮かべながら、聖叉はちかに顔を向ける。 「あいつ、大丈夫かにゃ? 未来の結果が死神のカードなんて不吉な予感がするにゃ。もしもこころが巻き込まれたりしたら──」  心の身を案じるちかの様子を見て、聖叉はカードを再び繰る。  今度は運に任せるように、束の中ほどから一枚のカードを引っ張り出し、戦車のカードの上に置いた。 「これは……彼次第みたいだね」 「あいつを見る限りの印象だと、一番足りてないものに見えるにゃ。解決できるかにゃ……?」 「ちか、死神のカードは必ずしも "死" を意味するわけじゃない。これは覚えておいて」 「にゅぅ……」  ちかは首を傾げると、怪訝な表情のまま考えこんだ。  聖叉はデスクの上に置いたカードを仕舞うと、闇に覆われつつある外へと視線を移す。  桜小路学院海田市校は山の上にある。  正門から道を北に下り、その坂道を下った場所──ジャグリオンとシ式は、そこにいた。  狙撃砲で貫かれ、運転席とコンテナに穴が空いたトラックの前に……。  心とあいちゃんは機体から降り、隆義はトラックのドアに手をかけようとしている。 「開けるよ!」  ガチャッ……死体が出てくる事を覚悟した隆義が、あえて勢いよくドアを開いた音だ。  だが、運転席は血まみれだったものの、そこに居るであろうものは── 「死体が無い……」 「あの人たちって仲間意識は高いんだね……連れて帰ったんだ」  とにかく、ミンチよりもひどいかもしれない死体を目にする事は避けられたようだ。  隆義と心は安堵の溜息をつき、一先ずは落ち着いた。  辺りは既に暗くなり、中を確認するには灯りが必要な様子だが……隆義は自宅の鍵と一緒にキーホルダーと繋がったLEDライトを取り出す。  小さな光がトラックの運転席と助手席を照らし、そのダメージが明らかにされていく。 「あいちゃん、ハンドルが無くなってるけどキーはそのまま残ってる」  隆義は状況を伝えながら、車体から一旦離れた。  代わりにあいちゃんが運転席に入り、背もたれに大穴が空いたシートに座る。 「エンジンをかけてみます」  あいちゃんの背は小学生並みに小さいが、足はどうにかペダルに届くようだ。言いながらクラッチペダルを踏み、キーを捻った。  キュルルル……とセルモーターが回る音が響き、ガンガンと大きなディーゼルエンジンが音を立て──
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