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第1章 初めまして異世界
目を覚ましたら異世界でした、なんて私がよく読んでいたネット小説では定番の展開だが、それは非現実的であり、だからこそ惹かれるのであって、実際にそういう目に会いたい訳ではない。少なくとも私は。
学校が終わり、いつものように帰宅部をエンジョイするべく帰路に着く私は途中にあるコンビニによって唐揚げちゃんを買った。
まだ5月の半ばだというのに外は既に暑く、じりじりと太陽に身を焼かれながら霞む視界を青信号に向けて一歩踏み出した直後、私の身体に衝撃が走った。衝撃は横から勢いよくぶつかってきたことから、なんとなく車だと直感する。自分の身体が空中に浮いた時、ああ、死ぬな、と嫌に冷静だったのを覚えている。死ぬってもっと痛いのかと思っていたが、案外そうではないらしい。痛みは感じなかった。徐々に冷えていく身体に私の頬を冷たいものが伝っていくのが感じられた。というところで、私の記憶は途切れている。
私は絶対死んだ筈なのだ。
手足の感覚もあるし、身体に痛みはない。だけど、視界は真っ暗で何も見えない。
もしかすると実は一命をとりとめていたりして……。うーん、でもおかしいんだよね。
病院のベッドがこんなに固い訳がないし、こんなにキツイ筈がない。たとえどんなに狭くても手足を伸ばせるぐらいはある筈、なのだが……。
伸ばせないんだよね。なんか多分体育座りしてるのかなぁ。
それに、なんだか先程から私が所狭しと動く度に世界が揺れ動くものだから、気持ちが悪い。まるで、何かのアトラクションの乗り物に乗っているような感じだ。
全然楽しくないけどねっ!
おかしいよこれ。どうしたらいいのっ!?
誰に助けを乞うわけでもなく、そう口にしようとした、いや、正確には口にしたつもりだった。しかし、自分の声が聞こえることはなく、ああ、耳までいかれたのか、と現実的に判断して絶望する。
しかししかし、私はこんなところで諦めるへなちょこではない。なんとか、この体育座りからだけでも脱出したい!
おーい、誰かー!
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