第一章

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と、こんな感じで半ば強引に姉のアパートに引っ越しをし、掃除から飯まで、本当に面倒を見てもらえたため、男やもめに蛆が湧かずにすんだ。 定年退職をした直後は、これまた姉のお節介が始まり。 ーーあんた、仕事辞めたら、どうせ一日中何にもしないでダラダラとして、苔でも生えてきそうな生活になっちゃうでしょ。 お姉ちゃん、今まであんたの面倒を色々みてきてあげたんだから、恩返しも兼ねてアパートの管理のお手伝いしなさい。 お節介な上にちゃっかりもしている。 しかしまぁ、確かに仕事でもなかったから、一日中何にもせず、生きてるんだか、死んでるんだかも分からない様な生活になるのは目に見えてるんだから、アパートの雑用くらいは快く引き受けてもいいだろうと思い、引き受けた。 なんだかんだと、雑用をこなしていくとあっという間に昼になる。 昼になると俺は首にかけたタオルで汗を拭いながら、いつも通り、アパートの真向かいに建っている平屋の日本家屋に向かう。 そこが、姉の家である。 「姉さん、上がるよー」 返事も待たずに玄関を上がり、さっさと洗面所で手を洗い、台所に向かう。 台所では姉がテーブルに、そうめんやらサラダやらを並べている最中だった。 「お疲れ様、お昼もう用意できるからね」     
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