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第二章
今日も相変わらず暑い。
昼も過ぎ、アパート入り口の掃き掃除をしていると背後から「すみません」と声がしたので振り返ると若い男が立っていた。
「すみません、コーポ宮永って、ここで合ってますよね?」
なんとも屈託無い笑顔で話しかけてきたこの若い男は、昨日姉が話していた例の二十歳の大学生だろうと予想がついた。
ーー綺麗な顔をしてるな、が第一印象だ。
若々しく張りがあるが、モヤシみたいに生っ白い肌だ。顔なんか手で覆うとすっぽり隠れちまいそうな小ささで、そのくせ目はパッチリと大きな二重ときてる。
声を聞いていたから、男と分かったが、黙っていたら男か女か悩んじまいそうな感じだ。
「ああ、そうだ。あんた、新しく入居する日向さんかな?」
「そうです。日向 瞬と申します。これからよろしくお願いします」
そう言うと青年は、礼儀正しく頭を下げた。
「俺は山浦 一豊、正確にはアパートの管理人は姉だが、雑用等は俺がやってるから、よろしく」
簡単に挨拶と自己紹介をすませ。
「とりあえず、本格的な入居は一週間後だろう。今日のところはアパート周りと部屋の中を少し見ていくかい?」
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