第二章

3/7
前へ
/33ページ
次へ
しかし、この青年は物腰は柔らかく、言葉遣いも相手を不快にさせないような、優しげなもので、いかにも好青年といったところか。もし俺がこんな態度をとれる男だったら、女房も出ていくことなどなかったのだろうか?? そんなことを考えながら、入居予定の一○ニ号室の鍵を開け、扉を開けた。 中は実に質素なワンルームで、玄関右に流しと、コンロが置いてあるが、料理をするには狭すぎて、せいぜい湯を沸かすくらいしかできない。左側にはユニットバス。真正面には畳部屋があり、ガラス戸で仕切られた縁側もあるが、日当たりが悪いもんだから、昼でも薄暗い。 「狭い部屋だろう」 この部屋を見て、やっぱやめるなんて言い出すんじゃないだろうか。苦笑いしながら、そう話しかけると。 「でも、僕一人なんで、このくらいで丁度いいです」 「そうか、じゃあ、一週間後。入居でいいんだね」 「はい、よろしくお願いします」 本当に笑顔を絶やさない青年だ。ひとつひとつの仕草が無邪気で、歳より更に幼く感じるところがあるかと思えば、相手の気遣いはしっかりできていて、そんなところは、ひょっとしたら俺よりも大人らしいかもしれない。 「では、僕は宮永さんにもご挨拶していきますので、これで失礼致します」 性格はキッチリと頭を下げ、「今日はありがとうございました」と礼を述べてきた。     
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加