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第一章
朝十時頃にのろのろと布団から身を起こし、だらし無く頭を掻きながら、身支度を済ませ、いつも通りに仕事を始める。
仕事といっても、住んでいるアパートの掃除、庭の手入れをそれなりにこなしていき、まぁ、気持ちばかりの不審者がいないか見回りをしていく。
といった感じのあまり気の張らない、形ばかりのアパートの管理人をしている。
六十歳になり、なんの迷いもなく、定年退職した。
女房には四十歳の時に逃げられた。
ーーあなたは何にも関心が無いのね、家族にも私にも
そんな感じで、一人身の身軽さから、仕事に固執する必要もなかったし、さっさと退職を決められた。
離婚した直後は、それこそ物事に関心が無い性分のため、家事全般なんぞ全く分からず、途方に暮れたが、持つべきものはお節介な姉というべきか。
ーーあんた、どうせ奥さんに逃げられて家のこと何にもできてないんでしょ、ご飯ちゃんと食べてんの? もぅ、心配だからあんた、私が経営してるアパートに引っ越してきなさい、面倒見てあげるから!」
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