翔ちゃん雨だよ一緒に帰ろ？

雨の日のすれ違い

窓の外をよく見たくて思わず椅子からお尻が浮いた。
それは、終礼間近のホームルーム中のことだった。

「平澤、どうした？」

「えっと、なんでも……ないです」

気づいたらほぼ立ち上がっていて、慌てて着席する。みんなにクスクス笑われて、すごく恥ずかしい。

でもそんなことよりも。
羞恥心を覆すほどのこの喜びを隠すのに困った。だって降ってるんだもん、雨が！

ぽつりぽつりと降りだした粒は、やがてまっすぐな線になって外の景色をあっという間に濡らしていった。

なんて久しぶりの雨なんだろう。
雨の日は翔(しょう)ちゃんと一緒に帰るって約束なんだ。窓の外の景色に気づいて、翔ちゃんもそのことをちゃんと思い出していますように。