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はじめてまともに見た安西は、カメラマンというよりも自分が被写体になってもいいんじゃないかと思うほど端整な顔立ちだった。
それに……なんだろう。
何かが気にかかったが、思考力を働かそうとしてもことごとく雑念が邪魔をして、そこにたどり着けない。
その雑念が苛立ちとか怒りだと自覚していても、環和は抑制できなかった。
「二十歳そこそこじゃなくて二十三歳です。わたしも四十代のおばさんになればわかるかもしれませんけど」
目の前にした安西は多く見積もっても三十代後半という感じだが、環和はわざと見た目よりも多く云ってみた。
安西は目を細めた。
おじさんだとほのめかされて気に喰わないのかと思いきや、一瞬後、鼻先で笑った。
「残念だったな、おれは三十八だ。人を見る目もなさそうだ。京香さんはきみと二つしか違わないけど、ちゃんとした大人だよ。怒ることもなく、きみの発言で神経質になったスタッフを和ませようとして、おれの話に乗ったんだからな」
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