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へぇー、という相づちを聞きながら、環和は人の噂がいかにいいかげんに広まっていくかを目の当たりにして呆れてしまう。
伝言ゲームのごとく、人づての話はちょっとした度忘れとそれを穴埋めしなければという意思で構成され、ときには正反対に伝わっている。
「本当はどっちなんだろう」
「イメージとかよりも、まず真野美帆子が不細工な人と結婚するとは思えないけど」
環和からするとそれらの会話は滑稽(コッケイ)極まりなく、いっそのこと、自分が真野美帆子の娘で、父親の水谷秀朗(ヒデロウ)はイイ男かというのは別にしてイケメンだとばらしてみようか。
環和はそんな誘惑に駆られた。
云ったとしても、だれもが冗談と受けとるだけだ。それくらい父親にも、“いま”の母親にも似ていない。
環和にとっては、彼らが親だというのは黒歴史みたいなものだ。
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