イベリス

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だから、転校先の学校でも、同級生たちと戯れることをしなかった。 そんな生意気な俺を、田舎の同級生たちはそっとして、でも優しく接してくれた。 そんな同級生たちに俺は... 徐々に心動かされていった。 思えば当時の俺がグレなかったのは、彼らのおかげかもしれない。 そんな優しい同級生たちの中で... 彼女は特別だった。 それが、佐伯さん。 なんで、特別になったのかは、覚えていない。 俺らは、特別仲良く話したわけでも、何かあったわけでもない。 ただ気が付いたら、彼女に惹かれていた。 だけど、情けない俺は、彼女と仲良くなることはおろか、話しかけることさえできなくて。 いつまでたっても、ただの同級生でしかなくて。 そのまま中学を卒業してしまった。 それから、彼女とは会うことはなかった。 彼女は、俺の思い出となったんだ。 初恋の美しい思い出と。
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