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《間宮 蒼汰》
「間宮さん、お入りください」
看護婦さんにそう呼ばれて。
友紀と共に病室の中に入る。
今まで何度も座ったこの席。
この席に座るのも今日で最後。
また、いつもの残念ですが…を聞くことになるのだろうか。
友紀との出会いは、友紀の勤めていた会社だった。
友紀の当時の上司である、総務部長さんに話があってお邪魔したあの日。
俺は、傘を応接室に忘れて帰ろうとしてしまって。
「あの、この傘お忘れじゃないですか?」
追っかけてきてくれたのが友紀だった。
…一目惚れだった。
「あ、ありがとうございます!!お礼にコーヒー奢りますよ?」
なんとか足止めしたくて。
目の前の自販機を指差してそう言ったけど。
「すみません、業務中なので、すぐ戻らないと…。お気持ちだけいただきます。気を付けてお帰りくださいね」
そう言われてしまった。
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