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「友紀、赤ちゃんの名前なんだけど…」
蒼汰が隣に座って。
「うん、考えた?」
生まれる前から、どんな名前がいいかって話していたけど。
最終的に3つにしぼったものの、あとは顔を見てから決めようと決めていた。
「「來未」」
声が揃った。
そして、2人で笑った。
この時、この人と結婚して良かった、はっきりとそう思った。
…遅すぎるかもしれないけれど。
それから、横山くんに会いに行くことはなくなった。
もっとも、來未を連れてまで行きたいとは思わなかったし。
「來未ー友紀ー。ただいまー」
会わなくなったら次第に忘れていった横山くん。
「おかえり。來未ちゃん、パパだよー」
かわりに私は今の幸せを手に入れた。
蒼汰がいて。
私がいて。
來未がいる。
そんな幸せを。
子供がいることだけが幸せだとは思わないけれど。
私たちは來未が幸せにしてくれた、そう思う。
ホオズキ『偽り』
END
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