カキツバタ2

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「今まで、奏子のこと、いっぱい泣かせたと思う」 真っ直ぐとこちらを見てそう言ってくれる芳樹。 芳樹のこの真っ直ぐな目が私はとても好き。 ライブのとき、ステージの上でしている目と同じ目。 「それなのに、一緒にいてくれてありがとう、奏子」 首を横にふる。 違うよ、一緒にいてくれてありがとうは、私のセリフだよ。 私は芳樹と一緒にいれるなら、それだけで幸せだったんだから。 「俺もさ、もう大人になることにしたんだ。今さらで悪いんだけど」 …それって… 「これからは、奏子だけを見る。だから、これからも、俺の隣にいてくれませんか?」 夢でも見てるのだろうか。 「奏子、返事は?」 断られることなんて考えてもいないであろうこの発言は、間違いなく芳樹だ。 そう、この人は芳樹なんだ。 「はい」 もう、夢なら夢でいい。 お願いだから、覚めないで。
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