スターチス

3/42
183人が本棚に入れています
本棚に追加
/1023ページ
「母さん、ただいま!!」 25年前、学校から帰ってきた俺が帰ってきた先は、家ではない。 「おかえり、一也。でも、もう少し静かにね」 母さんの言葉も半々にしか聞かずに俺が探したのは... 「ねぇ、侑也は?」 ここは、病院。 母さんは二日前、ここで弟の、岡本 侑也(オカモトユウヤ)を出産した。 「今、検診で新生児室にいるのよ」 侑也は、ちっさくて真っ赤な顔で、テレビで見た小猿みたいだ。 でも、すっげぇ可愛い。 「えー、いつ戻ってくるの、侑也」 ランドセルを置いて、手をきれいに洗って。 侑也を触る準備をする。 「んー、もう少しかしらね。新生児室、見に行く?」 侑也は、ちっせぇくせにすっげぇあったかいんだ。 それで、ちっせぇ手で俺の指をギュって握ってくる。 「うん!!」 俺は、病院が大嫌いだ。
/1023ページ

最初のコメントを投稿しよう!