イベリス

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そこで私は気付いてしまった。 ...私はこの人のことを好きなわけじゃないのかもしれない。 「...もちろん」 この人は、山本くんと同じ苗字。 その時点で、すでに特別だった。 「嫌じゃなかったら、俺のことも光琉って呼んでよ」 顔も背格好も、好みな感じではあった。 雰囲気は好みとは違ったけど、別に嫌いなわけではないし。 「...光琉、さん?」 優しいし、気が利くし、文句なんてない。 「光琉でいいよ、七海」 でも、恋愛ってそういう問題じゃないのかもしれない。 それでも、ズルイ私は光琉と付き合い続けた。 18で出会って、19で付き合いはじめて。 光琉は、20歳になって成人して、就職した。 私達は、手を繋いで、キスをして、抱き合った。 私は、それなりには、光琉のことを好きだったと思う。 ...それなりには。
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