魔法よ解けないで。

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そして、私たちの『シンデレラ』が始まった。 みんなが知ってる物語。 ハッピーエンドだって、みんな知ってる。 王子様が誰と結ばれるかだって…… ……みんな、知ってる。 だからね、王子様は目の前の、みすぼらしい服を着た可愛らしい女の子と一緒になるんだ。 ……みんな、そう思ってる。 スポットライトの当たる舞台で、みんなが脚光を浴びる。 まるで、いつものみんなじゃないみたい。 そんな舞台に響く音楽、飾られている小道具、なんとなく配置された大道具……。 みんな、みんな舞台の上を彩っている。 おとぎ話の世界の、幻想的な雰囲気。 みんなの力が、想いが、努力が、ひとつになっていく。 そんな中。 なんだか私だけが、取り残されたような気がしていた。 台本を書いたのは、私。 その台本で、みんなが次々と拍手を浴び、スポットライトを浴びていく。 華やかな世界。 うらやましいとか、そういう気持ちは無かった。けれど、 『私一人、傍観者』 そんな気がした。 舞台袖で、みんなの演技を見守る。 私が選んだ、監督の立場。 みんなが私の台詞で輝いてる。 それは、嬉しい事でしょう? それなのに、それなのに…… 私がいちばん力を入れたはずの、クライマックス。 その場面を見るのが、怖かった。 郁くんが、他の人を抱きしめるのが、怖かった。
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