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家を取り囲む警備隊へは高圧的に脅迫をし、音声通信を求めたハオ・リェンジェには泣き出しそうな声で理不尽を詰った。
「フユ。せめてこのロープを解いてくれないか?」
対外的な要求をすべて済ませたフユが大きく息を吐いた。緊張のせいかその顔はいつにまして白くなっている。
「がんばってるフユを撫でてやりたいんだけど?」
みるみるうちにフユの白くなっていた顔に朱が走った。真っ赤になったフユがしどろもどろに今はまだダメだと言い訳を始める。
「ごめんユーリ。でも失敗するわけにはいかないから」
これはあくまでフユの単独行動だと思わせなければならない。気心の知れた主治医と引き離されることにパニックを起こした患者が暴走しているという筋書きだ。ただし、その患者は専門家並みの知識をふんだんにもっている。
「あいつらが何を欲しがってるのか考えたんだ。それは理由は違っても結局は俺自身だって分かった。だから、俺はこの身体を盾にする」
「ハーヴェイは?」
「うまくいけば公安の連中と鉢合わせてくれるんだけど……」
そこは自信なさげに首を傾げたものの、その理由を言おうとはしなかった。これまでの、どこか遠慮したような口調は鳴りを潜め、フユの口調にはナツのようなくだけたリズムが混ざっている。
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