152人が本棚に入れています
本棚に追加
/187ページ
黒塗りの公用車から降りてきたのは、見覚えのある銀フレームの男だ。来た。フユが小さく身震いをした。
「ユーリ。俺、ちょっとみっともないとこ見せるかも知れないけど」
ハオ・リェンジェが通路になった石畳を足早に進む。フユはブラインドを締めると更に布で覆った。
フユは、ソファに座るユーリに近寄ると、そっと身をかがめ遠慮がちなキスをした。
廊下へと続く扉を開ける。会談場所は廊下だ。その細長い造りは、単身反撃をするフユに有利な地形となる。
フユがユーリの身体を支えて寝室へと移動させた。あくまでもユーリは自由のない人質だと見せるためだ。
「フユ」
戦地に赴くようなフユの背中に声をかけた。
「このロープを解いたら……もう一度キスしてくれるか?」
フユの顔が泣きそうに歪んだ。唇を噛み、大きく頷いてみせる。
「行ってくる」
フユの姿が消えた。
守られることで守れるものがある。
最初のコメントを投稿しよう!