強さ

4/4
152人が本棚に入れています
本棚に追加
/187ページ
 黒塗りの公用車から降りてきたのは、見覚えのある銀フレームの男だ。来た。フユが小さく身震いをした。 「ユーリ。俺、ちょっとみっともないとこ見せるかも知れないけど」  ハオ・リェンジェが通路になった石畳を足早に進む。フユはブラインドを締めると更に布で覆った。  フユは、ソファに座るユーリに近寄ると、そっと身をかがめ遠慮がちなキスをした。  廊下へと続く扉を開ける。会談場所は廊下だ。その細長い造りは、単身反撃をするフユに有利な地形となる。  フユがユーリの身体を支えて寝室へと移動させた。あくまでもユーリは自由のない人質だと見せるためだ。 「フユ」  戦地に赴くようなフユの背中に声をかけた。 「このロープを解いたら……もう一度キスしてくれるか?」  フユの顔が泣きそうに歪んだ。唇を噛み、大きく頷いてみせる。 「行ってくる」  フユの姿が消えた。  守られることで守れるものがある。
/187ページ

最初のコメントを投稿しよう!