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「国家元首にはサインさせたよ」
不意に膝から声がした。フユは目を閉じたままだ。
「約束なんてもんは、そのときの都合によっていくらでも破られるもんだぜ?」
キースが意地悪く言い諭す。
フユが目をこすりながら鈍い動きで起き上がった。
「全部がうまくいくのは無理だったんだよ。俺は俺のほしいものを我慢したくなかったから……まぁ俺たちが生きてる間くらいは守ってくれるといいけど……」
フユが頬を摺り寄せる。肩口にもたれたその髪をそっと撫でた。
「もし、繰り返されることになっても、その時代の良心的な誰かが止めてくれることを勝手に期待したんだ」
どこか拗ねたようなフユに、キースが堪らず吹き出した。
「そんなにコレと一緒が良かったのかい?」
行儀悪く指をさしたキースを横目で睨みつけた。ユーリは少し照れたように目をそらしている。
「たまには俺とも遊ばねぇ?」
「しない!」
性懲りもなく口説いてみせるキースにフユが噛み付く。見慣れた光景だ。知らず知らずのうちに笑みがこぼれる。
「そういえば、そのオッサンは置いといて……フユ、あれ結局はどうする?」
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