ともに生きる

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 不貞腐れるキースを無視して、サイドテーブルに置かれていた電子封筒を開いた。この時代にあえて紙で用意された中身は、その重要性の大きさを表している。  フユの生体登録申請の書類だ。医師としてのユーリが用意したデータはすでに添付されている。あとはフユが自筆で記入する部分だけだ。  所在地はすでにこの辺境の地が書き込まれている。今は雪に閉ざされているが、この地は不完全ながらも四季のある惑星だった。 「何に悩んでるんだ?」  懲りないキースが割って入る。この場所が気に入ったのか、中央シティに居住しているはずのキースは毎月のように訪ねてきていた。 「名前」 「フユじゃだめなのか?」 「それだと、なんか俺ひとりだけになるみたいだし……」  ユーリは相談役をキースに譲り黙って聞いている。 「ちょうどこの星みてぇだよな。一年のほとんどが冬で真っ白。そこに春とか夏とか秋とかが境目なく混ざってる感じっていうのか?」  アキは何を思って四季を名前に選んだのだろうかと考える。冷静で、事務的な口調を崩さない立ち居は今も目に焼き付いている。聡明なアキはどこまでを予想していたのだろうか。 「冬でもみんな混ざってる……」  フユが呟いた。 「寒いけど冬も嫌いじゃないし」  フユの独り言が続く。 「雪かきは大変だけど……」     
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