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徐々にずれていくコメントに我慢ができず、キースと二人揃って吹き出した。フユはといえば、どうして笑われているのか分からず、きょとんとしている。
その様子が可愛らしくてキスしたい衝動が襲ったものの、キースの手前飲み込み、ただ頭を撫でるに止めた。
「俺は……おまえをフユ以外の名で呼ぶことは想像できないんだ」
ずっとフユに任せていた案件に、ユーリははじめて意見を出した。フユの頬が一気に赤くなる。そのまま俯いたフユを見たキースが、アテられたとでもいうように肘をついてみせる。
「フユにする」
俯いたたままでフユが断言した。
「フユ・タチバナか」
「え?」
「え……?」
「あ……? なんだ違うのか?」
さらりと口にされたラストネームに、ユーリとフユは揃って動きを止めた。あまりにも驚いたその様子に、キースのほうが狼狽え、問い返す。
フユのペンは、ファーストネームだけを記入したところで止まっている。
その顔はもはや茹でられたタコ以上に赤い。
「フユ。ほら、書いて」
フユがぎごちなくペンを動かした。明らかに動揺したラストネームが記入される。
ユーリはそれをさっさと封筒に戻し、電子キーでロックをかけた。
「まったく、もったいねぇよな。こんな美人なのにユーリ一筋とか……」
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