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わざとらしくからかうキースにフユはもう爆発寸前といったところで、なにやら言い訳を並べて部屋から逃げ出した。
「パートナー申請もしといてやれよ?」
「言われなくても」
「けっ……なんかムカつくな」
悪態をつきながらもキースの表情は柔らかい。
「なぁ、ユーリよ。その備忘録とやら、俺にも寄越せよ」
「あんたがすでに知ってることしか書いてないよ」
ユーリの手からノートを取り上げたキースが、さっさとその中身に目を走らせる。
「『互いに意識を共有しあう解離において、統合を目指す場合の手段としては、嫉妬の感情が有効であることが確認される』か……行動データがひとつでは説得性に欠けるぜ?」
「ひとつじゃない」
ユーリがカミルに対して抱いたのも嫉妬であり、羨望だった。カミルの行動を羨ましいと思ったとき、ユーリはカミルという存在を認められたのだ。認めるということは受け入れることへの大きな前提となる。
フユは、それぞれの人格が各個に感じていた感情を、自分でも感じたいと思ったのが始まりだったという。そこにあるのは、自分ではない自分への嫉妬だ。
もちろんこれは、意識を共有している前提で、別人格が行動する際の記憶を無くしてしまうパターンについては無意味だ。
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