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8月32日の花火大会
「理! いつまで寝てんの! 登校初日から遅刻する気?」
いつもと違う母の言葉を聞きながら、俺は飛び起き時計を見た。
時計の針は8時を指している。
「やばっ! 昨日早く寝たのに~」
俺は昨日の自分に文句を言いながら急いで新しい制服を着る。慣れない制服に戸惑いはあったが、そんなこと言っている時間はない。
足音をいつもより大きく立てながら階段を降り、玄関に座る。
「あんた、学校までの道覚えているの?」
「あーなんとなく。まあ、同じ制服の人について行けばなんとかなるっしょ」
俺の適当な答えに、母は深いため息をする。
「はあ……大丈夫かしら」
「大丈夫だって! じゃあ行ってきます!」
そう言って俺はドアを乱暴に開けた。うっすら覚えている道を早足で歩いていると、同じ制服の人を見つける。
「お! ラッキ~」
俺は心の中でガッツポーズをすると、怪しまれないように後ろをついていく。
約10分歩くと新しい学校が見える。俺はついて行った人に小声で「ありがとう」と言うと、職員室の方へ向かった。
職員室に入ると俺に気づいたのか、1人の男性が近づいてくる。
「お~道は迷わなかった?」
「はい、大丈夫です」
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