あの日

2/3
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
ふと目を覚ますと見慣れた天井が目に入る。重たい瞼を再度閉じようとするが、徐々に大きくなっていくアラーム音が耳を貫き、無理矢理に脳を覚醒させられる。まだ少し朦朧とする意識の中で呟く。 --ああ、今のは夢だったのか。 そう自覚すると意識がはっきりとしてきた。 あれは、高校時代の日常。毎日が楽しかった頃の思い出。 俺は高校に入った当初、周りに馴染めないでいた。新しい制服、校舎、人。これまで積み上げてきた人間関係はすべて崩れ、また初めから積み直さなせればならない。そう考えると途方に暮れてしまった。そして、そうこうしている内にクラスでのグループが出来上がり、自分は完全に孤立したのだ。 授業の合間の休み時間などには話す相手など勿論おらず、中学時代からの趣味、読書で暇を潰す毎日を送った。特に昼は学校の図書館へと赴いてはずっと本を読んでいたおかげか、図書委員から発刊される『月刊 お前も本を読めよ。な?』--所謂、図書館だより--で発表される月間貸本数では毎月堂々の2位を飾っていた。そこに書かれている数字の9割は自分のもので、少しだけ誇らしくもあった。 しかし何故、それほど読んでいるのに毎月2位なのかって?それは毎月1位のクラスの貸本数は2位である自分のクラスの倍ほどだからだ。本が好きなクラスもあるものだ、とその時は思った。 そんな事で、周りと上手く打ち解けられないままの俺は部活にも入っていなかった。運動部など微塵も入る気は無いし、文化部も良さげなものはなかった。授業を受け、読書をし、帰る。そんなつまらない日々を過ごしていた俺に天気が訪れたのだ。 それが彼女との出会いだった。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!