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……下の階から聞こえてくる、悲鳴や叫び声がなければ。
にゃんこ達が、毛を逆立ててわたしに体をすり寄せてくる。
「よしよし、大丈夫。こわくないよ。
明日香さんたち、今日もはりきってるね…」
ひざによじのぼってきたトラ猫ののどをなでながら、わたしはため息をつく。
心霊現象で全国的に有名なこの病院は、
最近テレビでとりあげられたこともあり、
毎日のように
心霊マニアや興味本位の若者達がやって来る。
彼らを怖がらせて追い出すことが、
明日香さんたちの退屈しのぎになっているのだ。
わたしは怖がるのも、怖がらせるのも苦手。
ただ静かに暮らしていきたいだけなのに……
「ごめんね。騒がしくて」
不意に空から降ってきた声に、
わたしはおどろいてトラ猫を抱きしめた。
屋上の物置小屋の屋根に、
白っぽい金色の光が見える。
それが金髪の男の子だと気付いた時には、
彼は屋根から軽やかに飛び降りて、
わたしの目の前に立っていた。
まるで流れ星みたいに。
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