636人が本棚に入れています
本棚に追加
「でもこの病院に来たってことは、
この近くで死んだんじゃないの?
この辺りに海はないけど」
明日香さんの疑問に、
わたしも首をかしげる。
確かに、傷だらけで水に濡れ、
変色してふくれあがったボビーさんの姿からは、水死しか考えられない。
でも明日香さんの言うように、
この病院は山の頂上にあって、
海はもちろん、溺れるような大きさの川や沼もないはずだ。
ボビーさんは、かたことの日本語でつぶやいた。
「お、ジさま」
「え?」
「オウジさまに、オシえてもらいマシた。
ホシの、オウジさま。知ってイマすか?」
ボビーさんが必死で語った話を要約すると、
目覚めたとき、
ボビーさんは見知らぬ海の砂浜にいた。
少し離れたところで、
十数人の男女が花火を振り回しながら騒いでいた。
年齢的には、わたしと同じくらい。
中学か、高校生といったところだろう。
派手な服装で、お酒も飲んでいたらしい。
その中に
『王子様』がいた。
最初のコメントを投稿しよう!