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「あいつらビビりだから。
ひとしきり騒いだら気がすむと思う」
着崩したワイシャツとネクタイ、
耳にたくさんのピアス。
屋根の上に座っているときは、
女の子のように線の細い綺麗な顔立ちで中学生くらいに見えたのに
並んで立つと背が高い。
地上から10センチ浮かんでいるわたしよりも、頭ひとつぶん高いところに顔がある。
あまりにも自然に話しかけられたので、
彼もわたしと同じ霊体なのかと思ったけれど、
スニーカーのかかとはしっかり地面に着地している。
警戒心丸出しで後ずさる
わたしと猫たちを見て、彼は笑った。
くちもとから八重歯が見えた。
「そんな怖い顔すんなよ。
半年前くらいかな。他の奴らと来たことあって。そのときも俺、ここにいたんだ。
凛は、全然気づいてなかったけど」
「なんで、名前……」
「なんかセクシー系のお姉さんが、りん、て呼んでたから」
明日香さんのことだ…
「今日もいるんだ、うらめしにゃーごたち」
毛を逆立てて威嚇する猫たちを、
彼は手を伸ばしてさわろうとする。
うらめしにゃーごって……
おかしな名前をつけられたことを知ってか知らずか、
猫はうらめしそうな顔でわたしを見上げた。
思わず笑ってしまった。
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