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少年と呼ぶには、
背も高くて体つきもしっかりして、
大人の男性のようだけど
彼の目は、
どこかさみしげで心細げで。
星の王子様も、こんなふうに夜空を見上げて故郷の星に置いてきたバラのことを思っていたのかもしれない。
「ボビーさん、あなたにとても感謝してました」
「あなたって……なんか恥ずかしいからやめない?
俺、アオ。漢字で難しい方の蒼(あお)」
「蒼、さん」
声に出してつぶやくと、止まっているはずの心臓が、小さくふるえたような気がした。
あくまで気のせいだけど。
階下から聞こえる悲鳴や、
病棟を逃げ回る足音が激しさを増し、
蒼さんを呼ぶ声も聞こえる。
「いいんですか? お友達、呼んでますよ」
「バイクのキー持ってるの俺だからね。これないと帰れないから」
蒼さんは指に引っかけた三個の鍵をゆらしながら言う。
「もうちょっと怖い思いさせてからにするわ。
これに懲りたらあいつらもう来ないだろ。
凛も迷惑でしょ?面白半分で他人に家に上がりこまれるの」
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