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やっぱり、そうだ。
蒼さんは当たり前のように、
わたしたち幽霊にも感情があることを知っている。
生身の人間からしたら
当たり前なのかもしれないその気遣いが、
今のわたしにはとても嬉しかった。
「優しいんですね。蒼さん」
「いや普通でしょ。
てか凛こそ、その笑顔やばいから。
ツンデレ、とかいうやつ?
もしかして俺のことたぶらかして
取り憑こうとしてない?」
「してません!!」
照れ隠しのように意地悪を言う蒼さんに
怒りながらも、
わたしは今までにないくらい、
心が落ち着いているのを感じていた。
さっき初めて会う人にこんな気持ちになるのは、
おかしいかもしれないけど。
夏の夜空の下、
蝉の声と蒼さんの友達の雄叫び、
蒼さんが吐きだす細い煙と
猫たちがひざにまとわりつく感触が心地よくて、
わたしは……
え? 蒼さんが吐き出す、煙……?
「蒼さん、何してるんですか?」
「え、これタバコ」
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