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「バカッ!!
将来に夢がない?
たった17年しか生きてないくせに、
何人生悟ったようなこと言ってるの?
せっかく健康で丈夫な体で生まれたのに!
時間も可能性もいっぱいあるくせに!
もっと自分を大切にしなさいよ!!」
屋上のフェンスをビリッと震わすほどの大声に、
おびえた猫たちが跳び上がって
ちりぢりに逃げて行く。
階下で聞こえていた悲鳴や足音も
嘘のように静まり返った。
蒼さんは、口を半分開けたまま、
わたしを見つめて固まっている。
指にはさんでいた煙草が
ポロッと地面に落ちた。
「ちゃんと拾ってくださいね。
ポイ捨てとか最悪なので」
「あ、あぁ……ごめん。
でも俺、灰皿とか」
「その辺に落ちてる空き缶にでも入れて持って帰ってください」
「ハイ。ごめんなさい」
ぎくしゃくとしたロボットのような動きで、蒼さんは空き缶を拾っている。
蒼さんに対する好意は嫌悪感に変わっていた。
煙草が空き缶に落とされたのを確認して、わたしが背を向けて階下に降りようとしたときだった。
蒼さんのひとりごとのようなつぶやきが聞こえた。
「ヤバ。たぶらかされた。
つかまれた。
刺さった、完全に」
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