204人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
浩也はスーツケースをカラカラと転がし
ながら歩き、吉祥寺行きバスの自動
券売機に並ぶ。成田エクスプレスを利用
して電車で向かってもいいのだが、
乗換えが面倒だ。
吉祥寺駅北口でバスを降りると蒸し暑
かった。湿気が身体に纏わりつくような
感じがする。歩いて数分の本社に到着した
頃にはじっとりと汗をかいていた。湿度の
高さに浩也は帰国した実感を抱く。
エントランスホールでエレベータを待って
いると、背後から企画部の西村黎の良く通る
声が聞こえた。
「あらぁ、西島くん、随分急な帰国だこと。」
「緊急事態発生。」
最初のコメントを投稿しよう!