夢では幸せだったね

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父が亡くなり、5年が過ぎようとしている 父が真っ当な人間では無かった事を 僕は父の没後、 しかも 1年も経って知った。 詳しい内容を話しても 大して面白味のあるようなものじゃない その辺の犯罪を仕事にする輩 それが父だったという事だ。 父が死に 棺桶の中すら覗かなかった僕。 冒頭でも言ったが 僕は父を嫌ってなど居ない。 恐らく好きだった...だろう。 だが父親というモノをよく知らない。 あの人から感じる事は何も無かった。 それでも僕の父親だ、という事実。 否定の出来ない事実が有ると限り。 好きでいる方が良いだろう。 コレが僕の考えだ。 母は知っていた様だが、 だから何という事もない。 母にとって何の仕事をしようが関係など無い。 金を産めば満足。 過去を見ても明らかだったが。 父と同じ業種の金ズルと 3年前に再婚した事が何よりの証拠だ。 兄と姉は父親が変わっただけの生活にあっさり順応している。 噂によれば、新しい父親は 姉とは"特に仲良く"している。 らしい。 元々愛情などない母は見て見ぬふり。 兄も金が自由に使える環境だ、 文句など垂れることも無い。 僕は家族との縁こそ切ることが出来ずに居るが 同居は免れている。 金なら自分で工面した。 勿論犯罪は犯してない。 大学進学の予定が狂ったが、 1年越しに奨学金制度も利用しつつ あっさり大学へも行った。 そして今年卒業を控えている。 人生など簡単すぎるゲームに過ぎない。 相変わらず張り合いもない つまらない世界に僕は居る。 定期的に実家への帰還を強制され、 新しい父親へ媚びへつらう家族を 冷ややかな目で見つめる。 だけの無駄な時間。 無言で食事をするだけの時間。 共に食卓を囲む意味も、 運ばれてくる食事も、 僕の人生の時間を無駄にするだけの時間。 あの頃と、成長も無い。 何も変わり映えのしない... そう思っていた。 あの声を聞いてしまうまでは...
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