夢では幸せだったね

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僕が高校3年になろうとした時 僕は人生で初めて "いつもと違う日常" を見た。 それは、僕が車の免許を取得し 帰宅すると外国製の高級車が僕を迎えた日。 父と兄が喧嘩しているのを見た。 焦りや恐怖は無かった。 どうせ兄の理不尽なワガママだと思った。 何となく予想が出来たからだ。 それは、この車。 僕が父からプレゼントされたこの車は 兄の車よりも、ほんの少しグレードが高い。 ただそれだけ。 だが、その"ただそれだけ"が、兄にとっての沸点になる事は明らかだ。 そして、解決も見えている。 父が兄に新車を与える。 万事解決。 兄が弟である僕より劣る車に乗りたがらない事ぐらい、いくら言っても馬鹿でも分かる筈だ。 きっと兄への新車の用意ぐらい出来ているだろう... そう。僕もまた正常では無い。 冷静なのではなく。 冷酷なのだ。 僕には、一般的な感情が無い。 自覚している。 怒りも感じない。 悲しみも、感動もない。 冷めきった人間だと... 自覚している... 嫌だった。 母や兄弟達が感情を露わに暮らす姿が... 馬鹿にみえた。 僕はそうはなりたくなかった。 チヤホヤされたり。 怒りに任せて人をねじ伏せたり。 結局は全て父の金があってこそだからだ... 僕がもし、そのようなことを望む日が来るとすれば。 僕自身の、力や魅力でチヤホヤされたい。 僕自身に恐怖し、従わせたい... 未来の僕はそう思うはず。 だけど今僕にそんな力は無い。 だから今、僕は感情を持っても意味を成さない。 コレが僕の答えだ。 なんと思われても構わない。 コレが僕だから。
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